保護活動から離れる時。動物、仲間、そして自分自身への正直な気持ち
保護活動から離れる時、心に生まれる静かな波紋
保護活動に数年携わっていると、様々な経験をします。喜び、感動、そして多くの困難や葛藤です。活動を続ける中で、ふと「このまま続けていけるだろうか」という疑問が頭をよぎる瞬間があるかもしれません。あるいは、具体的な理由から「活動から離れる」という選択を真剣に考え始めることもあるかと思います。
保護活動からの卒業、あるいは一時的な休息。これは、活動への参加と同じくらい、いえ、それ以上に個人的で、複雑な感情が絡み合う決断だと感じています。今回は、私が活動から少し距離を置くことを考えた時、あるいは実際に離れた仲間の話を聞く中で感じた、動物たち、共に活動する仲間、そして自分自身への正直な気持ちについてお話ししたいと思います。
動物たちへの「申し訳なさ」と「愛着」
活動を辞めることを考えた時、まず最初に心を占めるのは、やはり動物たちのことです。特に、自分が深く関わってきた子、看取りまで寄り添った子、あるいはまだ新しい飼い主さんが見つかっていない子たちの顔が思い浮かびます。「私が離れたら、この子たちはどうなるのだろうか」「もっとできたことがあったのではないか」という申し訳なさが込み上げてきます。
一時預かりをしていた動物がいる場合は、その責任感はさらに大きくなります。次に預かってくれる人はいるのか、環境が変わることへの不安など、尽きない心配事があります。愛情をかけてお世話してきた子たちから物理的に離れることは、想像以上に辛いものです。まるで自分の子どもを手放すかのような、胸が締め付けられるような感覚になることもあります。
活動を通して芽生えた動物たちへの深い愛着と、自分がもう彼らの日常に直接関われなくなるという現実との間で、心は激しく揺れ動きます。それは決して簡単な感情ではなく、長い間、心の中に残り続ける感情でもあります。
仲間との関係性で生まれるプレッシャーと感謝
保護活動は、多くの場合、一人では成り立ちません。共に汗を流し、喜びや悲しみを分かち合う仲間の存在は、活動を続ける上で非常に大きな支えとなります。だからこそ、活動から離れることを仲間に伝えるのは、とても勇気のいることでした。
「私が抜けることで、残された仲間に負担がかかるのではないか」「頑張っているみんなに対して、私は逃げているのではないか」といった、一種のプレッシャーを感じることもあります。辞めたい理由を正直に話すべきか、それとも差し障りのない理由にするべきか、といった悩みを抱える人もいます。
しかし、私が経験したり見聞きしたりしたほとんどの場合、仲間は理解を示してくれました。「今までありがとう」「いつでも戻ってきてね」といった温かい言葉に、活動を続けることへの感謝と、離れることへの寂しさが同時にこみ上げました。活動を通じて築かれた絆は強く、活動という場を離れても、人としての繋がりは残ることもあります。この時の、申し訳なさと感謝が入り混じった感情もまた、活動のリアルな一面だと感じています。
自分自身への問いかけと肯定
活動から離れるという選択は、自分自身の心との対話でもあります。活動を始めた頃の情熱や理想と、今の自分との間にギャップを感じているかもしれません。辞めることを「挫折」や「限界」だと捉え、自分自身を責めてしまうこともあります。
「私は保護活動に向いていなかったのだろうか」「もっと頑張るべきだったのではないか」といった自己否定の感情が湧き上がってくることもあります。活動に費やした時間、労力、感情といったものが、これで良かったのだろうか、と立ち止まって考える時間でもあります。
しかし、活動から離れることは、必ずしも失敗や否定を意味するものではない、と今は感じています。活動を続ける中で心身のバランスを崩してしまったり、他の大切なものを見失ってしまったりするくらいなら、一度立ち止まる勇気も必要です。自分自身の正直な気持ち、体の声に耳を傾け、「続ける」以外の選択肢を選ぶことも、自分を大切にする活動の一つだと思うようになりました。
活動から離れることを決めた時、それは新たな自分と向き合う始まりでもあります。保護活動で得た経験や学びは、決して無駄になるものではありません。その経験をどのように活かしていくか、活動とは異なる形でも動物や社会に関わっていくことはできないか、そういった前向きな問いかけに繋がることもあります。
離れることもまた、活動の一つの形
保護活動から離れる、あるいは一時的に距離を置くという選択は、時に大きな罪悪感や葛藤を伴います。しかし、それは活動の場を離れることに対する自然な感情であり、決して恥じることではありません。動物たちへの責任感、仲間への配慮、そして自分自身の限界や変化。これら全てを受け止めた上での決断は、決して軽々しいものではないはずです。
活動を続けることだけが、保護活動への貢献ではありません。活動を通じて得た知識や経験を、別の形で広めること、心身を休めて再び何らかの形で関わる力を蓄えること、あるいは活動の厳しさを経験したからこそできる、静かな応援という形もあるでしょう。
活動から離れるという選択は、終わりではなく、保護活動との関わり方、そして自分自身の生き方を見つめ直す新たなスタートになるかもしれません。この経験を通じて、私たちは活動の厳しさだけでなく、自分自身の心の強さや弱さ、そして本当に大切にしたいものに気づかされるのだと感じています。
まとめ
保護活動から離れることを考えたり、実際にその選択をしたりすることは、動物への思い、仲間との関係、そして自分自身との深い対話を伴う、非常に個人的なプロセスです。罪悪感や申し訳なさ、自己否定といった感情が湧き上がってくるかもしれませんが、それらは一生懸命活動に取り組んできた証でもあります。
活動の形は一つではありません。続けることも、休むことも、離れることも、それぞれのタイミングで必要な選択であり、そこから得られる学びや気づきが必ずあります。自分自身の心と体を大切にし、保護活動で得た経験を胸に、自分なりの方法で動物たちや社会との関わりを見つけていくことが、何よりも大切なことだと感じています。