保護活動の本音

保護活動で仲間が辞める時。残されたボランティアが向き合う感情のリアル

Tags: 保護活動, ボランティア, 人間関係, 心のケア, 活動継続

保護活動で仲間が辞めていく現実に向き合う

動物保護ボランティアの活動は、多くの人々の善意と協力によって成り立っています。同じ志を持つ仲間と共に汗を流し、喜びや困難を分かち合う時間は、活動を続ける上での大きな支えとなります。しかし、活動を続けていく中で、避けられない現実として、共に歩んだ仲間が活動を辞めていく場面に私たちは何度も立ち会うことになります。

様々な理由で仲間が去っていく時、残されたボランティアは少なからず動揺し、複雑な感情を抱えます。それは単に人手が減ることへの不安だけでなく、共に目指したゴールや、築いてきた関係性が変化することへの寂しさや戸惑いでもあります。今回は、活動経験者として、そうした仲間の離脱と向き合う中で感じてきたリアルな感情と、それにどう向き合っているのかをお話ししたいと思います。

共に活動した仲間が去る時、心に生まれる波紋

「活動を辞めます」という言葉を聞くたび、心には様々な波紋が広がります。もちろん、家庭の事情や体調など、やむを得ない理由であることは理解できます。また、活動の厳しさから心身が疲弊してしまった、活動方針の違いから居心地が悪くなった、といった理由を察することもあります。どのような理由であれ、共に動物たちのために尽力してきた仲間がいなくなるというのは、やはり寂しいものです。

ある時、設立初期から活動を支えてくれたベテランの方が、突然「もう限界です」と活動から離れることを決められました。長年、多くを学び、頼りにしてきた方だっただけに、その衝撃は大きいものでした。同時に、「なぜ気づいてあげられなかったのだろう」「もっと負担を減らすことはできなかったのだろうか」と、自責の念に駆られたこともあります。

また別のケースでは、新しい方針に対して意見が合わず、少し険悪な雰囲気のまま活動を辞めていかれた方もいました。その時は、「なぜ理解してくれないのだろう」という気持ちと、「もっと話し合えたら違ったのかもしれない」という後悔が入り混じり、後味の悪さがしばらく心に残りました。

辞めていく理由が明確な場合もあれば、漠然とした「しんどさ」や「燃え尽き」である場合もあります。理由がはっきりしない時は特に、残された側としては「何か問題があったのだろうか」「自分のせいではないか」と考えてしまいがちです。活動における人間関係は、通常の友人関係や職場関係とも異なり、共通の「命」という重い責任を背負っているからこそ、その繋がりが途切れることへの精神的な負担は大きいと感じています。

仲間の離脱は、残されたメンバーへの業務負担増にも直結します。引き継ぎがうまくいかなかったり、特定のスキルを持つ人がいなくなったりすると、活動の質やスピードに影響が出かねません。こうした現実的な問題も、感情的な負担に拍車をかけることがあります。

辞めていく仲間を見送り、そして活動を続けるために

多くの仲間を見送ってきた中で、私が少しずつ学んできたのは、「去る者追わず、来る者拒まず」の精神を持つことの重要性です。冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、ボランティア活動はそれぞれの「できること」や「状況」に応じて行うものであり、人生のステージが変われば活動を続けるのが難しくなるのは当然のことです。

辞めていく仲間に対しては、これまでの貢献に心から感謝し、その選択を尊重する。そして、無理に引き止めたり、必要以上に理由を探ろうとしたりしないように心がけています。それぞれの人生があり、それぞれのペースがある。それはボランティアである私たち自身にも言えることです。いつか自分が活動を休止したり、辞めたりする日が来るかもしれない、という視点を持つことで、去っていく仲間への理解が深まることもあります。

同時に、残されたメンバー同士で支え合うことの大切さを改めて感じます。一人が抜けた穴を全員でカバーし、お互いの負担を軽減するためにコミュニケーションを密にする。そして、新しいメンバーが加わった時には、心から歓迎し、温かく迎え入れる。活動は常に変化し、メンバーも入れ替わっていきますが、その時々に集まった人々で最善を尽くしていくこと。それが活動を継続していく上での鍵だと考えています。

仲間の離脱は辛い経験ですが、それは同時に、今一緒に活動している仲間との繋がりや、動物たちとの絆の尊さを再認識する機会でもあります。そして、様々な別れを経験してもなお、活動を続けようとする自分自身の内にある「保護への思い」と向き合う時間でもあります。

変化を受け入れ、今ここにある繋がりを大切に

保護活動において、仲間の離脱は避けられない現実の一部です。それは個人的な理由であったり、活動自体の厳しさであったりと様々ですが、残された側には寂しさ、不安、戸惑い、そして時に自責の念が伴います。しかし、こうした感情と向き合い、受け入れることもまた、活動を続けていく上で必要なプロセスなのだと感じています。

去る仲間への感謝を忘れず、その選択を尊重すること。残されたメンバー同士で協力し、新たな関係性を築いていくこと。そして何よりも、今目の前にいる動物たちと、共に活動する仲間との繋がりを大切にすること。変化を恐れず、柔軟に対応していく姿勢が求められます。

別れは確かに辛いものですが、それは決して活動の終わりを意味するものではありません。それぞれの場所で、それぞれの形で動物たちの幸せを願う気持ちは変わらないと信じています。これからも、時には寂しさを感じながらも、新しい出会いを喜び、今ここにある繋がりを胸に、一歩ずつ活動を続けていきたいと考えています。