活動と日常のはざまで。保護ボランティアが向き合う心身の負担と両立のリアル
保護活動と自分自身の「はざま」で揺れる日々
動物保護ボランティアは、多くの人にとって尊い活動であり、動物たちの命を救うという明確な目的があります。活動を始めた頃は、「助けたい」という一心で、休みなく活動に時間を費やし、体力的にも精神的にも無理をしてしまいがちです。私もそうでした。保護した動物のケア、病院への搬送、里親探し、活動の資金集め…どれも欠かせない大切な活動で、やればやるだけ成果が見えるような気持ちになり、際限なく時間を投入してしまいます。
しかし、活動を続けていくうちに、ふと気づくことがあります。それは、保護活動が自分の日常や心身に与える影響の大きさです。仕事や家族との時間、自分の趣味や休息といったプライベートが削られていくこと。常に活動のことが頭から離れず、精神的に休まらないこと。そして、動物たちの置かれた厳しい現状や、全ての命を救うことができない現実を目の当たりにすることによる心の負担です。
多くの保護ボランティアは、この「活動と日常のはざま」で揺れながら活動を続けているのではないでしょうか。理想と現実、責任感と自身の限界。今回は、私自身の経験も踏まえながら、この心身の負担と両立のリアルについて、率直にお話ししたいと思います。
活動が変える自分自身の心と体
保護活動は、私たちの心を大きく揺さぶります。懸命にケアした動物が元気になった時の喜びは格別ですが、一方で、どれだけ手を尽くしても救えなかった命、つらい状況で亡くなっていく動物たちの姿は、心に重くのしかかります。
特に、看取りや、病気や怪我に苦しむ動物たちとの関わりは、精神的に大きな負担となります。自分に何かできることはもっとあったのではないか、もっと早く気づいていれば…そんな後悔の念に苛まれることもあります。活動に真剣に向き合うほど、動物たちへの感情移入は深まり、喜びと同じくらい、深い悲しみや無力感を感じることが増えていきます。
また、活動は時間や体力も大きく消耗します。夜中の緊急搬送、鳴き続ける子犬たちのケア、体力のいる清掃作業。仕事が終わってからや週末の時間は、ほとんど活動に費やされます。自分の休息時間が減り、疲労が蓄積していくと、体調を崩しやすくなります。さらに、金銭的な負担も無視できません。医療費やフード代、活動にかかる諸経費は決して少なくなく、自身の家計を圧迫することもあります。
こうした心身の負担は、気づかないうちに蓄積され、活動を続けるモチベーションの低下や、バーンアウト(燃え尽き症候群)につながることもあります。常に「もっとできることがあるはず」「自分がやらなければ」という気持ちが、自分自身を追い詰めてしまうのです。
両立の難しさ、そして見つけた小さな工夫
保護活動と自分自身の生活を両立させることは、本当に難しい課題です。完璧を目指せば目指すほど、どこかに歪みが生じます。私の場合は、活動初期に仕事や家族との時間を犠牲にしすぎた結果、関係性がぎくしゃくしてしまった経験があります。また、無理がたたり体調を崩し、結局活動に参加できなくなってしまったこともありました。
この経験から、私は「完璧なボランティア」を目指すのではなく、「長く続けられるボランティア」を目指すことの重要性を痛感しました。そのためには、自分自身の心身を大切にすることが不可欠です。
具体的な工夫としては、
- 「ノー」と言う勇気を持つこと: 全ての依頼や要望に応えることはできません。自分のキャパシティを正直に伝え、時には断ることも必要だと学びました。
- 意識的に休息を取る時間を作る: 活動とは全く関係のない、自分の好きなことをする時間や、何も考えずに休む時間を意識的に設けるようにしました。
- 頼ること、助けを求めること: 一人で抱え込まず、他のボランティアや周囲の人に協力を求めること。情報を共有し、課題を分担することで、精神的な負担が軽減されることがあります。
- 完璧主義を手放す: 全てを完璧にこなすことは不可能だと認め、自分にできる範囲で最善を尽くす、と考えるようにしました。
- 活動以外の人間関係も大切にする: 活動仲間との繋がりは重要ですが、活動から一旦離れてリフレッシュできるような、活動以外の人間関係も大切にしています。
これらの工夫は、すぐにできたわけではありません。罪悪感を感じたり、自分が「不十分なボランティア」のように思えたりすることもありました。しかし、自分自身が健全でなければ、動物たちを継続的にサポートすることはできないということを、身をもって学びました。
厳しさの中に光を見出し、歩み続ける
動物保護ボランティアの活動は、確かに厳しい現実と向き合うことの連続です。心身の負担は大きく、両立の難しさに頭を抱えることも少なくありません。しかし、その厳しさの中にも、かけがえのない喜びや学びがあるからこそ、多くのボランティアは活動を続けているのだと思います。
困難な状況から立ち直っていく動物たちの生命力、新しい家族のもとで幸せに暮らす姿、そして、同じ志を持つ仲間たちとの出会い。これらの経験は、私たちの心を豊かにし、人として成長させてくれます。
両立は、活動を続ける限り常に問い続けられる課題かもしれません。それでも、自分自身の限界を知り、時には立ち止まり、周囲に助けを求めながら、自分を大切にしながら活動を続けていくことが、結果としてより多くの動物たちを救うことに繋がるのだと信じています。
このリアルな現実を知った上で、それでも「自分にできること」を続ける。その一人ひとりの歩みが、動物たちの未来を少しずつ明るくしていくのだと感じています。自分自身の心と体の声に耳を傾けながら、これからも保護活動と自分自身の人生との間で、最適なバランスを探し続けていきたいと思っています。