「応援しています」の言葉、喜びと重圧。保護活動者が向き合う本音
「応援しています」の言葉と、その裏で感じる見えないプレッシャー
動物保護活動を続けていると、本当に多くの方から温かいお言葉をいただきます。「頑張ってください」「応援しています」「いつもありがとう」。これらの言葉は、活動の厳しい現実と向き合う中で、私たちボランティアにとって何よりの励みであり、活動を続ける大きな原動力となっています。
感謝の気持ちに嘘はありません。ですが、正直なところ、こうした応援の言葉が、時にひっそりと胸に重圧としてのしかかることがあるのも事実です。それは、期待に応えたい、という健やかな思いだけでなく、期待を裏切ってしまうのではないか、という怖れや、自分たちの力不足を感じる瞬間と強く結びついています。
温かい応援と、その裏で感じた葛藤
活動を始めたばかりの頃は、ただただ無我夢中で、いただいた応援の言葉を純粋なエネルギーに変えることができていました。新しい命を迎え入れたり、譲渡が決まったりするたびに報告すると、「良かったね」「感動しました」といったメッセージが届き、その度に「もっと頑張ろう」と気持ちが引き締まるのを感じました。
しかし、活動歴が長くなるにつれて、私たちは喜びだけでなく、どうにもならない厳しい現実に直面する機会も増えてきます。助けたい命を助けられなかったり、懸命な治療にも関わらず動物が旅立ってしまったり、あるいは資金繰りに苦労したり、ボランティア間の意見の対立に悩んだりすることもあります。
そんな厳しい状況にある時、「あの犬は元気になりましたか?」「早く新しい家族が見つかるといいですね」といった、純粋な応援や期待の言葉を聞くのが、時に辛く感じることがありました。もちろん、悪意など微塵もないことは分かっています。ただ、その言葉が、乗り越えられない壁や、自分たちの無力さを突きつけられているように感じてしまうのです。
特に、「あなたたちにしかできない」「期待しています」といった言葉は、ありがたい反面、責任の重さを改めて感じさせられます。もし自分たちが期待に応えられなかったら、この子を救えなかったら、活動を続けられなくなったら…そんな不安が頭をよぎり、プレッシャーとなって肩にのしかかってくるのです。
これは私だけでなく、他のボランティア仲間からも聞かれる本音です。皆、支援してくださる方々への感謝の気持ちでいっぱいですが、同時に、その期待に応え続けられるかというプレッシャーと静かに戦っているように感じます。
プレッシャーとどう向き合うか
こうしたプレッシャーと向き合う中で、私が少しずつ意識するようになったことがあります。それは、「応援は、私たちの活動そのものに向けられている」と捉え直すことです。特定の成果や、劇的な成功を期待されているのではなく、私たちが地道に、目の前の命と向き合っているその姿勢そのものを、多くの方が温かく見守ってくれているのだ、と考えるようにしました。
また、支援者の方々への報告の仕方にも変化がありました。良いことだけを伝えるのではなく、困難な状況や課題についても、正直に、しかし希望を失わずに伝えること。そうすることで、保護活動のリアルな側面をご理解いただき、過度な期待ではなく、現実に基づいた応援へと繋がるのではないかと考えるようになりました。もちろん、全ての情報を開示できるわけではありませんし、悲壮感を煽るような伝え方は避けるべきですが、率直さは信頼関係を築く上で重要だと感じています。
そして何より、自分自身の心を守ることの重要性を学びました。全ての期待に応えることは不可能であると認め、自分たちの活動の範囲や限界を理解すること。そして、応援の言葉をエネルギーに変えつつも、それがプレッシャーに変わりそうになったら、一度立ち止まり、自分たちのペースを取り戻す勇気を持つこと。ボランティア仲間と率直に気持ちを共有することも、大きな支えとなります。
感謝と共に、前へ
「応援しています」という言葉は、私たちにとって、活動を続ける上でなくてはならない大切な力です。その言葉をくださる全ての方々に、改めて心から感謝申し上げます。
同時に、その温かい応援が、時に見えないプレッシャーとなるのも保護活動のリアルな側面の一つです。私たちは、そのプレッシャーを全く感じなくなるわけではありませんが、それを活動を停滞させる重しにするのではなく、感謝の気持ちと共に、一歩ずつ着実に、目の前の命のためにできることを続けていきたいと考えています。
活動には、理想と現実のギャップ、喜びと苦悩、そしてこうした様々な感情との向き合いが常にあります。しかし、その全てを含めて、動物たちのために奮闘する日々の中に、確かにかけがえのない価値と喜びがあることを信じて、私たちはまた明日へ歩みを進めます。