保護活動の本音

保護活動のSNS活用、見えないプレッシャーとどう向き合うか

Tags: SNS活用, 広報, 精神的負担, ボランティアの悩み, 保護活動のリアル

保護活動とSNS、切っても切れない関係のその先に

動物保護活動において、SNSは今や欠かせないツールとなりました。保護している動物たちの情報を広く伝え、新しい家族を探したり、活動資金の支援を呼びかけたり、啓発活動を行ったり。その拡散力と即時性は、活動を大きく前進させる可能性を秘めています。実際に、SNSを通じて多くの方に知っていただき、ご支援やご縁につながった経験は、活動の大きな励みになります。

しかし、一方で、SNSでの発信には見えないプレッシャーや、時に活動の厳しさとはまた違った種類の苦悩が伴うことも、活動を続けている多くの方が感じているリアルではないでしょうか。今回は、私たち保護活動に関わる者が、SNSでの発信を通じて直面するリアルな葛藤と、それにどう向き合っていくかについて、私の経験を踏まえてお話ししたいと思います。

成果への期待と、現実のギャップが生むプレッシャー

SNSで発信する最大の目的の一つは、保護動物に良いご縁を見つけること、あるいは活動資金を集めることです。そのため、投稿一つ一つに「この子に興味を持ってくれる人が現れるように」「この投稿で支援が集まるように」という期待と願いを込めます。

可愛い写真や動画、感動的なストーリーは共感を呼びやすく、反応も得やすい傾向にあります。しかし、長期滞在の子のこと、医療費がかさんでいる子のこと、あるいは保護の現状についての厳しい現実などを投稿しても、なかなか反応が得られないことも少なくありません。SNSのアルゴリズムや「映え」が重視される風潮の中で、「見てもらうためには」「反応を得るためには」という意識が強くなり、時に疲弊してしまうのです。

「この子のために頑張って投稿しているのに、どうして伝わらないのだろう」「もっと魅力的な発信をしなければ」といった焦りや無力感が募り、それが知らず知らずのうちに大きなプレッシャーとなります。特に、他の団体の活発なSNSや成功事例を目にすると、「自分たちのやり方ではダメなのか」と落ち込んでしまうこともあります。

批判や誤解、そして心ない言葉との遭遇

SNSのもう一つの難しさは、匿名性のある空間ゆえに、時に事実に基づかない批判や、悪意のある心ない言葉に晒される可能性があることです。

保護活動は、良かれと思って行っていることでも、立場や視点が違えば批判の対象になることがあります。例えば、保護した経緯、医療判断、譲渡条件、資金の使い方など、活動のあらゆる側面に意見や批判が寄せられる可能性があります。真摯な意見交換であれば学びもありますが、感情的な非難や決めつけ、活動を誹謗中傷するようなコメントに触れると、大きな精神的なダメージを受けます。

「私たちの活動は間違っているのだろうか」「こんなことを言われるなら、もう発信したくない」と、せっかくの良い取り組みを伝える意欲が削がれてしまうこともあります。また、発信内容が意図せず誤解を生んでしまったり、心ない言葉にどう対処すれば良いか分からず、孤立感を感じることも少なくありません。

時間と労力、プライベートとの線引きの難しさ

保護動物のケアだけでも手一杯な状況の中で、SNSの更新に割く時間と労力は決して少なくありません。魅力的な写真や動画を撮影・編集し、状況を正確かつ分かりやすく伝える文章を作成し、コメントやメッセージに返信し、常に新しい情報をキャッチアップする。これらはすべて、通常の保護活動に加えて行うべきタスクです。

活動経験が長くなるにつれて、任される範囲が広がったり、自身のペース配分が分かってきたりする一方で、「SNSの発信も私がやらないと」「もっと効果的な発信を」と責任感から負担が増えてしまうこともあります。

さらに、活動のリアルを伝えるために、時にプライベートな時間や空間の一部を切り取って発信することになります。預かりボランティアであれば、自宅での様子を公開することになりますし、活動資金の調達のために自身の収入や貯蓄について言及することもあるかもしれません。活動とプライベートの線引きが曖昧になり、常に「発信しなければ」という意識に囚われたり、周囲から活動と自身の生活を同一視されたりすることに息苦しさを感じることもあります。

見えないプレッシャーとどう向き合うか

このようなSNS発信にまつわる見えないプレッシャーや苦悩に、私たちはどのように向き合っていけば良いのでしょうか。私の経験から言えることは、まず「完璧な発信を目指さないこと」が大切だということです。

SNSはあくまで活動を助けるツールであり、その目的は情報伝達や共感の輪を広げることにあるはずです。すべての投稿に「いいね」がたくさんついたり、常に期待通りの反応が得られたりすることは現実的ではありません。反応が少なくても落ち込みすぎず、伝えるべき情報を伝えることに集中する姿勢が必要です。

批判や心ない言葉については、すべてを真正面から受け止めないことも重要です。建設的な意見であれば真摯に耳を傾けるべきですが、単なる誹謗中傷であれば、無視する、ブロックするなど、自分自身の心を守るための適切な距離感を保つことが必要です。SNSのルールや報告機能も活用しましょう。

そして何より大切なのは、無理をしないことです。SNS疲れを感じたら、潔く休む勇気も必要です。投稿頻度を減らしたり、コメントのチェック時間を制限したりするなど、自分にとって負担にならないペースを見つけることが、長く活動を続けるためには不可欠です。信頼できる活動仲間や、活動とは関係のない友人、家族に話を聞いてもらうことも、心を整理する上で大きな助けになります。

発信の先にある、小さな光と大きな喜び

SNSでの発信には確かに苦労やプレッシャーが伴いますが、その先に得られる光があることも忘れてはなりません。私たちが発信した情報が、一匹の動物に新しい家族との出会いをもたらしたり、一人の心に保護動物への関心を芽生えさせたり、あるいは共感した誰かが活動の輪に加わってくれたりする瞬間です。

「投稿を見て、何かお手伝いできることはありますか?」「この子を家族に迎えたいです」といったメッセージをいただくたびに、SNSを通じて私たちの活動が確かに誰かに届いている、そしてそれは動物たちの未来につながっているのだと実感します。この、SNS発信の先に広がる可能性と、そこから生まれる小さな光や大きな喜びこそが、見えないプレッシャーを乗り越える原動力となるのではないでしょうか。

最後に

保護活動におけるSNS発信は、時に私たちに大きな負担を強いることがあります。完璧を目指さず、心ない言葉に傷つきすぎず、そして何より無理をしないこと。自分自身の心と体も大切な活動資源です。

SNSはあくまでツールです。そのツールと上手に付き合いながら、私たちが伝えたいメッセージ、守りたい命、そして活動から得られる喜びを、無理のない範囲で発信し続けていくことが、長く、そしてより良い活動につながっていくと信じています。