保護活動を続ける中で見えてきた、私自身の変わらないものと変わったもの
活動を通じて向き合った、自分自身の内面
保護活動に関わるようになって、気がつけば数年が経ちました。この間に見てきたこと、経験したことは、私のそれまでの人生では想像もできなかったことばかりです。喜び、悲しみ、怒り、無力感。様々な感情が複雑に絡み合いながら、私自身の内面も少しずつ、あるいは大きく変化してきたように感じています。
活動を始める前、私は漠然と「動物が好きだから何かしたい」と考えていました。しかし、実際に現場に足を踏み入れてみると、それは想像以上に厳しく、美談だけでは語れない現実が広がっていました。多頭飼育崩壊の現場、病気や高齢でケアが難しい子たち、人間に心を閉ざしてしまった子たち。そして、その命を救うために奔走するボランティアさんたちの、文字通りの自己犠牲。
こうした現実に触れるうち、私の中で何が大切なのか、何に価値を見出すのか、といった根源的な問いが生まれてきました。
変わらざるを得なかった「時間」と「優先順位」
まず大きく変わったのは、時間に対する意識と優先順位です。かつては自分のために使っていた自由な時間やお金の多くが、活動のために充てられるようになりました。それは誰かに強制されたわけではなく、「この子のためにできることは何か」「今、自分が動かなければ」という思いからの自然な流れでした。
もちろん、それによって犠牲になったこともあります。友人との付き合いが減ったり、趣味に費やす時間がなくなったり。正直、「これでいいのだろうか」と悩んだ時期もありました。しかし、目の前の小さな命たちが、自分を必要としてくれている。その事実が、何よりも優先すべきことなのだと考えるようになりました。
これは単なる自己犠牲ではなく、私にとって何が最も大切なのかを問い直す作業でした。命の尊さ、助けを必要としている存在への責任感。そういったものが、自分の中で揺るぎない価値観として確立されていったように感じています。
命との向き合い方、そして「死」への意識
保護活動では、嬉しいことばかりではありません。懸命なケアにも関わらず、動物を看取らなければならないこともあります。初めて看取りを経験したとき、私は数日間立ち直れませんでした。あんなにも小さくて温かかった命が、自分の腕の中で冷たくなっていく。その感覚は、今思い出しても胸が締め付けられるようです。
しかし、こうした経験を重ねるうちに、「死」に対する意識が変わってきました。かつては遠いもの、避けたいものだった死が、命の営みの一部として、より身近なものとして感じられるようになったのです。そして、限られた命だからこそ、今この瞬間をどう生きるか、どのように寄り添うかが大切だと強く思うようになりました。
看取りは何度経験しても辛いものです。それでも、「この子が独りぼりではなかった」という事実、「最期まで温かい手の中でいられた」という事実だけが、私たちに残された慰めであり、活動の意義の一つであると考えるようになりました。これは、保護活動をしていなければ決して得られなかった価値観だと思います。
人との関わりの中で見えた「多様性」と「葛藤」
保護活動は、動物だけでなく、多くの人と関わる場でもあります。ボランティアさん、行政の方、獣医さん、そして譲渡希望者さん。様々な立場や考えを持つ方々と関わる中で、人それぞれの「保護」に対する思いやアプローチがあることを知りました。
時に、意見の対立や価値観の衝突も起こります。なぜあの団体はああいうやり方をするのだろうか、なぜこの人はこういう考え方なのだろうか。理解できないと感じ、悩んだことも一度や二度ではありません。
しかし、皆根底には「動物を救いたい」という同じ思いがある。アプローチや考え方の違いはあれど、目指す方向は同じなのだと、少しずつではありますが理解できるようになってきました。そして、自分自身の考え方も絶対ではないこと、他の視点から学ぶべきことがたくさんあることを痛感しました。この「多様性」を受け入れる姿勢は、活動を始める前よりもずっと強くなったと感じています。
厳しさの先に見出した、私自身の「変わらないもの」
保護活動は、常に困難や葛藤と隣り合わせです。それでも私が活動を続けているのは、この活動を通じて得られる、何物にも代えがたい喜びがあるからです。それは、弱っていた動物が元気を取り戻し、心を開いてくれた瞬間であり、新しい家族の元へ旅立っていく姿を見送る瞬間です。そして何より、「どんな命にも、幸せになる権利がある」という、私自身の揺るぎない信念を再確認できる瞬間です。
活動の厳しさは、時に私たちの心や体を消耗させます。理想と現実のギャップに打ちのめされそうになることもあります。しかし、そうした経験を通じて、自分自身の内側にある「動物たちのために何かをしたい」「彼らの命を大切にしたい」という純粋な思いが、決して揺るがず、むしろ強くなっていることに気づきました。
この「変わらない思い」こそが、私が保護活動を続ける上での原動力であり、困難を乗り越えるための支えとなっています。
まとめ:活動が教えてくれた、命と生き方
保護活動は、確かに大変な活動です。時間も労力も精神力も必要とされます。思い通りにならないこと、辛いことの方が圧倒的に多いかもしれません。
しかし、この活動は私に多くのものを与えてくれました。命の尊さ、生きることの強さ、そして自分自身の内面と向き合うことの重要性です。活動を通じて私の価値観は変わり、人生に対する考え方も深まりました。何が本当に大切なのか、どう生きるべきなのか。その答えを探し続ける旅は、これからも続いていくのだと思います。
もしあなたが、保護活動を通じて自分自身の変化に戸惑ったり、活動の意義を見失いそうになったりしているなら、それは多くの活動者が経験する自然な過程だと思います。厳しさの中にこそ、あなた自身の「変わらない思い」と、新しい価値観を見出すヒントが隠されているのかもしれません。
私自身のこの経験が、誰かの心の支えに、あるいは自身と向き合うきっかけに、少しでもなれば嬉しく思います。