保護活動における新しいメンバーとの向き合い方。経験者が見たリアルな課題
新しい出会いと、その裏側にある経験者の本音
保護活動を続けていると、新しいボランティアメンバーとの出会いがあります。活動の輪が広がることは喜ばしいことですし、新しい視点やエネルギーをもたらしてくれる存在は本当にありがたいものです。一方で、活動歴が長くなるにつれて、新しいメンバーを迎える際に感じる期待とともに、いくつかの複雑な感情や課題に直面することも少なくありません。今日は、数年活動を続けてきた経験者として、新しいメンバーとの向き合い方で感じてきたリアルな側面についてお話ししたいと思います。
熱意だけでは乗り越えられない壁
新しいメンバーは、動物たちを救いたいという純粋な熱意を持って活動に参加してくれます。その意欲は素晴らしいですし、私たち経験者も活動を始めた頃は同じような気持ちだったはずです。しかし、保護活動の現実は、残念ながら熱意だけでは乗り越えられない壁がたくさんあります。
例えば、現場の衛生管理、投薬の方法、動物たちの微妙な体調の変化の見極め、他のボランティアや預かりさんとの連携、そして何より、命に関わる判断や、時には心身ともに疲弊する状況への対処などです。これらの多くは、実際に経験し、学びを積み重ねることでしか身につかないものです。
新しいメンバーにどこまで、どのように伝えるべきか。すぐにすべてを求めることはできませんし、焦らせてはいけません。しかし、安全や命に関わることについては、時には厳しく、繰り返し伝える必要があります。この「どこまで教えるか」「どう伝えるか」のバランスに、経験者は悩むことが多いと感じます。
価値観のすれ違いとコミュニケーションの難しさ
それぞれが異なる背景を持ち、異なる価値観で保護活動に参加しています。熱意の方向性や、活動に割ける時間、動物との関わり方に対する考え方も様々です。新しいメンバーの新鮮な視点は時にハッとさせられることもありますが、長年の経験から培われたルールや暗黙の了解、活動のスタンスなどとぶつかることもあります。
例えば、良かれと思ってやった行動が、実は団体内のルールや他の預かりさんとの連携を乱してしまうこともあります。これは悪意からくるものではなく、単に全体の流れや背景を理解していないために起こります。このような場合に、どう説明すれば角が立たずに伝わるか、相手の意欲を削がずに理解してもらえるか。経験者は、自身の言葉選びや伝え方に細心の注意を払う必要が出てきます。うまく伝わらない時には、歯がゆさや、時には少しの苛立ちを感じてしまう自分に気づくこともあります。
また、新しいメンバー育成には時間も労力もかかります。自分の通常の活動に加えて、指導やフォローをする負担が増えます。その努力がすぐに実を結ばなかったり、期待したほど活動にコミットしてもらえなかったりすると、落胆したり、「なぜ私だけが」という孤独感を感じたりすることもあります。
育成は自身の学びでもある
新しいメンバーとの関わりは、困難な側面ばかりではありません。彼らのまっすぐな熱意に触れることで、自分が活動を始めた頃の気持ちを思い出す機会にもなります。また、彼らからの素朴な疑問に答える中で、自分自身の知識や経験を改めて整理し、深めることができます。
育成という過程は、一方的に教えるだけでなく、自分自身のコミュニケーション能力や、相手への理解力を試される場でもあります。どうすれば相手が安心して質問できる環境を作れるか、どうすれば活動の厳しさを伝えつつ、希望を持ってもらえるか。これらの問いに向き合うことは、ボランティアとしてだけでなく、人としての成長にも繋がると感じています。
そして何より、新しいメンバーが一人でも活動に定着し、共に動物たちのために汗を流してくれるようになった時の喜びは大きいものです。活動の可能性が広がり、分担できる作業が増え、救える命が増えるかもしれない。その手応えこそが、新しいメンバーを迎える上での苦労を乗り越える原動力となります。
完璧な関係ではなく、共に歩む道を模索する
保護活動における新しいメンバーとの向き合い方は、決して簡単なものではありません。理想通りにいかないこと、期待外れ、誤解、そして育成の負担。これらは多くの経験者が密かに抱えているであろう課題です。
しかし、完璧な人間関係を求めるのではなく、互いの立場を尊重し、オープンな対話を通じて理解を深めようと努力し続けることが大切だと感じています。新しいメンバーもまた、不慣れな環境で一生懸命活動に参加しようとしています。その努力と熱意を認めつつ、経験者として冷静かつ丁寧に、活動のリアルや必要な知識・スキルを伝えていくこと。そして、共に活動を続けていく中で、小さな成功を喜び合い、困難を分かち合うこと。
新しいメンバーと共に歩む道は、保護活動そのものと同じように、時に厳しく、時に温かい、そして多くの学びと成長に満ちた旅なのだと感じています。この旅を通じて、一人でも多くの動物たちが幸せを掴むことができるよう、私たちはこれからも歩み続けていきます。