保護活動の本音

保護活動、あの時の後悔。失敗から次にどう活かすか

Tags: 保護活動, ボランティア, 後悔, 失敗, 学び, 経験談

保護活動で向き合う「失敗」や「後悔」という現実

動物保護の活動は、尊い命を救うという大きなやりがいがある一方で、常に最善の結果が出るとは限らない厳しさも伴います。一生懸命に関わっても、思うような結果にならなかったり、自分の判断が適切だったのかと後で思い悩んだりすることは、活動を続ける中で避けられない側面ではないでしょうか。

特に数年活動を続けていると、初期の情熱だけでは乗り越えられない壁にぶつかることがあります。その一つが、「失敗」や「後悔」の感情です。過去の経験を振り返り、「あの時、ああしていればこの子の未来は変わったのではないか」という思いに囚われることもあります。

この記事では、私自身の保護活動での経験から、失敗や後悔とどう向き合ってきたか、そしてそこから何を学び、次にどう活かそうとしているのかについて、正直にお話ししたいと思います。活動の中で似たような悩みを抱えている方の、何か小さなヒントになれば幸いです。

あの時、私の判断は正しかったのだろうか?具体的な失敗談から考える

保護活動における「失敗」は、意図的なものではありません。しかし、知識や経験の不足、時間の制約、あるいは予期せぬ事態によって、結果として動物にとって最善とは言えない状況を生んでしまうことがあります。

数年前、私が預かりを担当していた若い犬の話です。彼は保護された当初から少し臆病な面がありましたが、人懐っこさもあり、すぐに新しい家族が見つかるだろうと思っていました。しかし、特定の物音に極端に怖がったり、散歩中にパニックを起こしたりする問題行動が見られるようになりました。当時の私は、経験も浅く、その犬の行動の根本原因を深く理解できていませんでした。「愛情不足だろう」「時間が解決してくれるだろう」と、表面的な対応に終始してしまったのです。

結果として、彼は問題行動が改善されないまま、譲渡の機会を何度も逃してしまいました。彼の不安に寄り添えず、適切なケアができなかったこと、専門家への相談をもっと早く検討すべきだったこと。今思えば、後悔ばかりが募ります。彼の持つ可能性を最大限に引き出してあげられなかったのではないか、私の力不足のせいで彼を長い間待たせてしまったのではないか、と自責の念に駆られました。

また、別の経験では、他のボランティアとの意見の対立から、連携がうまくいかず、結果的に保護動物のケアに遅れが生じてしまったこともあります。それぞれが動物を思う気持ちは同じなのに、コミュニケーションの齟齬によって不信感が生まれ、活動が滞る。これもまた、人間関係における私の未熟さが招いた失敗だと感じています。自分の意見を押し付けすぎたり、相手の立場を十分に理解しようとしなかったり。感情的になってしまった自分を反省しました。

資金の限界から、もっと手厚い医療を受けさせてあげられなかった、という無力感を味わったこともあります。どこまで費用をかけるべきか、命の選別のように感じてしまい、非常に苦しい判断を迫られました。最善を尽くしたつもりでも、どうしても割り切れない後悔が残るのです。

後悔を学び、次に繋げるために

このような失敗や後悔の経験は、心を深く傷つけ、時には活動そのものから距離を置きたくなるほど辛いものです。しかし、そこから目を背けず、真摯に向き合うことこそが、次に繋げるために必要なステップだと考えるようになりました。

まず、大切なのは自分を責めすぎないことです。保護活動は、完璧を求めるにはあまりにも複雑で、常に最善を尽くしてもコントロールできない要因が多く存在します。あの時の自分は、その時点での精一杯をしていたはずです。当時の知識、経験、環境の中で下した判断であり、それを今の視点から一方的に断罪することは、建設的ではありません。

次に、失敗から具体的な学びを得ることです。前述の若い犬の例では、行動学の重要性を痛感し、関連書籍を読んだり、専門家の意見を聞く機会を積極的に持ったりするようになりました。他のボランティアとの連携においては、感情的にならず、事実に基づいて冷静に話し合うこと、相手の言葉の背景にある思いを想像することの重要性を学びました。資金に関しては、クラウドファンディングなど、新たな資金調達の方法を模索したり、事前にリスクを想定した費用計画を立てる練習をしたりしています。

後悔の感情は、私たちがもっと良くなりたい、動物たちのためにもっとできることをしたいという強い思いがあるからこそ生まれるものです。その感情を、自分を落ち込ませるエネルギーではなく、学び、成長するための原動力に変えることができれば、活動を続ける力になります。

そして、一人で抱え込まないことです。信頼できる他のボランティアや、活動とは関係ない友人、家族に話を聞いてもらうことで、気持ちが整理されることがあります。また、同じように失敗や後悔の経験を持つ仲間と話し、共感し合うことで、孤独感が和らぎます。必要であれば、専門家によるカウンセリングなどを検討することも、心をケアするために有効です。

厳しさの先に、学びと成長がある

保護活動における失敗や後悔は、辛い経験ではありますが、そこから目を背けずに学びを得ようとすることで、私たちは活動者として成長することができます。あの時の悔しさが、次の命を救うための行動力に変わる。それが、保護活動を続ける中で見出した、厳しさの中にある希望です。

完璧な活動は難しいかもしれません。でも、過去の経験から学び、少しでも良い判断ができるように努力し続けることはできます。自分自身の限界も知り、無理をせず、信頼できる仲間と協力しながら活動していくことが、心身の負担を軽減し、長く活動を続けるためにも大切だと実感しています。

後悔から学びを得て、次に繋げる。その積み重ねが、一頭でも多くの動物の未来を明るくすることに繋がると信じています。そして、その過程で感じる小さな成功や、動物たちが見せてくれる笑顔が、私たちの活動を続ける一番のモチベーションになるのです。