保護活動のリアルな経済事情。医療費、運営費…見えない負担とどう向き合うか
動物保護活動にボランティアとして関わる中で、私たちは様々な「リアル」に直面します。命との向き合い、困難な状況、ボランティア間の人間関係など、美談だけでは語れない側面があることは、経験者であれば痛感されていることでしょう。
今回は、活動の根幹に関わりながらも、なかなかオープンに語られにくい「お金」の話に焦点を当てたいと思います。保護活動における資金繰りの現実、特に医療費や運営費といった見えにくい負担について、これまでの経験を通して感じてきた本音をお伝えできればと思います。
理想と現実のギャップ:活動にかかる費用の実際
保護活動を始めた当初、私は「寄付や助成金で賄われるのだろう」と漠然と考えていました。もちろん、それらは活動を支える上で非常に重要な柱です。しかし、実際に活動に深く関わるにつれて、理想とはかけ離れた厳しい現実があることを知りました。
動物たち一頭あたりにかかる費用は、想像以上に多岐にわたります。まず必須なのは、ごはん代、トイレ用品、ケージやベッドなどの消耗品です。これだけでも数をこなせば 상당한 금액になります。しかし、最も予測不能で高額になりがちなのが「医療費」です。
例えば、ある時保護した子猫は、運ばれてきた時点で重度の猫風邪をひいており、さらに栄養状態が悪く、複数の寄生虫に感染していました。数日間の入院、点滴、様々な検査、投薬が必要となり、その子一頭にかかった医療費はあっという間に数万円を超えました。また、別の保護犬は、交通事故に遭っていたことが判明し、複雑な骨折の手術が必要になりました。その手術と入院、リハビリにかかった費用は、数十万円に達しました。
このようなケースは、決して稀なことではありません。保護される動物の多くは、何らかの病気や怪我、心の問題を抱えています。獣医師の先生方は保護団体価格で対応してくださることもありますが、それでも必要な医療行為には費用がかかります。治療の選択が、そのまま費用に直結するため、獣医師との連携、そして何よりもその費用をどう捻出するかという問題に常に頭を悩ませることになります。
寄付だけに頼れない運営費の重み
個々の動物にかかる費用に加え、団体として活動を続けるためには、運営費も必要です。シェルターを借りている場合は家賃や光熱費、通信費がかかります。事務作業に必要な文具や印刷代、譲渡会を開催するための費用、広報活動の費用なども発生します。
寄付は大変ありがたい支援ですが、毎月安定して必要な額が集まるわけではありません。不景気や社会情勢によって変動しますし、大きな病気を抱えた子が続くと、その月の医療費だけで寄付を上回ってしまうこともあります。助成金も応募の手間がかかりますし、採択される保証はありません。
こうした状況が続くと、団体の貯金がみるみる減っていきます。そして、最終的には活動に関わる個人の持ち出しが増えることになります。自分の給料から活動費を捻出したり、個人的な貯金を切り崩したりすることも珍しくありません。これは金銭的な負担だけでなく、「自分がなんとかしなければ」という精神的な重圧にもつながります。
お金がもたらすボランティア間の葛藤
資金の問題は、ボランティア間の人間関係にも影響を与えることがあります。「なぜこの子にそこまでお金をかけるのか」「もっと効率的な使い道があるのではないか」「個人の持ち出しには限界がある」など、お金に関する価値観の違いから意見が衝突することもあります。
皆、動物たちを助けたいという同じ思いで集まっています。しかし、限られた資金の中で最善を尽くそうとする時、何に優先順位をつけるべきか、どこまで費用をかけるべきかといった判断は非常に難しく、正解があるわけではありません。それぞれのボランティアが抱える経済状況や、これまで見てきた経験によっても考え方が異なります。
お金の話は感情的になりやすいため、話し合いが難航することも少なくありません。しかし、資金の問題から目を背けてしまうと、活動そのものが立ち行かなくなってしまいます。こうした葛藤に直面しながらも、どうすればより良い方向へ進めるのか、常に模索しているのが現実です。
この現実とどう向き合い、活動を続けるか
資金の厳しさは、保護活動を続ける上で避けて通れない課題です。この現実と向き合うために、私自身が意識していること、あるいは団として取り組んでいることとしては、以下のような点があります。
一つは、資金の透明性です。どのような費用にどれくらいかかっているのかを明確にし、ボランティア間や支援してくださる方々に正直に伝える努力をしています。これにより、信頼を得られ、資金協力の理解も深まるように感じています。
また、資金調達方法の多様化も重要です。単に寄付を募るだけでなく、チャリティイベントの開催、オリジナルグッズの販売、クラウドファンディングの活用など、様々な方法を試みています。手間はかかりますが、これにより活動を知ってもらう機会も増え、新たな支援につながることもあります。
そして何よりも、ボランティア自身が燃え尽きないための工夫です。経済的な負担が大きすぎると、活動を継続することが困難になります。個人の負担には限度があることを認め合い、無理のない範囲で協力し合う体制づくりが大切です。また、お金の話だけでなく、活動の中で得られる喜びや達成感を共有し、精神的な支え合いをすることも、困難を乗り越える上で非常に重要だと感じています。
最後に
保護活動における資金繰りは、理想とは異なる厳しい現実です。医療費の高騰や運営費の負担は大きく、ボランティアの心にも重くのしかかります。お金に関する悩みや葛藤は尽きませんが、これもまた、私たちが救いたいと願う命を守るために必要なプロセスの一部です。
この困難な現実から目を背けるのではなく、どうすれば乗り越えられるのか、どうすれば活動を継続できるのかを仲間と共に考え、行動していくことが大切だと感じています。そして、活動を通じて動物たちが元気になり、新しい家族のもとで幸せになる姿を見る時、資金繰りの苦労も含めたこれまでの全ての努力が報われるように思うのです。
この厳しい現実を知っていただくことが、保護活動へのさらなる理解や支援につながることを願っています。そして、同じように資金の悩みを抱えている活動者の方々にとって、この記事が少しでも共感や、今後の活動へのヒントになれば幸いです。