保護活動の本音

保護活動で向き合う、他の団体との「違い」。連携と葛藤のリアル

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保護活動における「連携」と、そこにある「違い」

動物保護活動に携わっていると、「他の団体との連携」が重要だとよく言われます。それぞれの得意分野を活かし、情報やリソースを共有し、より多くの命を救うために手を取り合う。それは理想的な姿であり、実際に地域で活動する上で欠かせない視点だと感じています。

一方で、活動を続ける中で、私たちは様々な保護団体と関わる機会が増えます。合同譲渡会に参加したり、特定の案件で協力したり、情報交換をしたり。そうした中で、必ずと言っていいほど直面するのが、それぞれの団体が持つ「違い」です。保護の基準、医療にかける方針、譲渡の条件、資金集めの方法、ボランティアの運営体制、そして動物たちへのアプローチや考え方。理念の根幹に関わる部分から、日々の細かな運用まで、実に多様な「違い」が存在します。

こうした違いに触れるたび、理想としていた「連携」の難しさを肌で感じることになります。そして、時には他の団体と比較してしまい、自身の活動や所属する団体のやり方に対して、迷いや葛藤を抱くことも少なくありません。今回は、この「他の団体との違い」にどう向き合ってきたか、そこから何を感じ、学んできたのか、私の経験をお話ししたいと思います。

違いから生まれる連携の壁と、心の内

例えば、保護する際の選定基準一つ取っても、団体によって温度差があります。行政からの引き出しを優先する団体、多頭飼育崩壊など特定の現場に特化する団体、高齢や病気の子を積極的に受け入れる団体。私たちの方針とは異なる基準を持つ団体との連携を考える際、「なぜあの団体はこうしないのだろう」と感じたり、逆に「うちはこれで良いのだろうか」と自問自答したりします。

医療の方針も大きな違いが出やすい部分です。どこまで検査や治療を行うか、代替療法をどこまで取り入れるか。高額な医療費が必要になった際に、どこまで覚悟を持って向き合うか。私たちの団体では一定の基準を設けていますが、他の団体が私たちよりも積極的な医療を行っているのを知ると、「もっとできることがあるのでは」と不安になったり、「限られた資金の中で、どの命に優先順位をつけるべきか」という古くて新しい悩みに再び向き合わされたりします。

また、他の団体がSNSで華々しい活動報告をしているのを見ると、私たちの地道な活動が色褪せて見えるような焦りを感じることも正直あります。もっと効率的に、もっと目立つ活動をしなければ、資金も集まらないし、注目もされないのではないか。そんな比較から生まれる劣等感や焦燥感は、モチベーションを維持する上で静かに心を削っていくように感じられます。

これらの「違い」は、単なるやり方の差ではなく、それぞれの団体が持つ歴史や理念、代表や主要メンバーの経験、そして活動する地域の状況など、様々な要因が絡み合って生まれたものです。頭では理解できても、感情的にはすんなり受け入れられないこともあります。

連携を試みた際に、こうした違いが摩擦を生むことも経験しました。お互いのやり方や考え方を尊重しきれず、コミュニケーションがうまくいかずに、結局連携に至らなかった、あるいは短期間で頓挫してしまったケースも複数あります。理想の連携は、違いを認め合うことから始まると分かってはいても、それがどれほど難しいことか痛感しました。

違いを受け止め、自身と向き合う

しかし、こうした経験を重ねる中で、私は「違いがあること」自体は避けられない、むしろ自然なことなのだと考えるようになりました。動物保護という活動は、一つの正解があるわけではなく、多様なアプローチがあって当然です。それぞれの団体が、それぞれの置かれた状況や理念に基づいて、最善だと思う方法で命と向き合っている。その多様性があるからこそ、様々な状況の動物たちが救われる可能性が生まれているのかもしれません。

大切なのは、その違いを否定的に捉えるだけでなく、そこから学びを得る姿勢を持つことだと今は感じています。他の団体のやり方を見て、「私たちにはできないけれど、こういう考え方もあるのだな」と知る。あるいは、「あのやり方は私たちには合わないけれど、この部分は参考になるかもしれない」と、自団体の活動を見直すきっかけにする。違いは、私たち自身の活動を客観的に見つめ直し、視野を広げるための鏡になり得るのです。

そして、他の団体との比較から生まれる焦りや不安については、自分たちの活動の「軸」を再確認することで乗り越えようとしています。なぜ私たちはこの活動をしているのか、どのような動物たちに、どのような方法で寄り添いたいのか。その原点に立ち返ることで、表面的な成果ややり方の違いに惑わされず、自分たちのペースで、自分たちが信じる形で活動を続けていく勇気をもらえます。

全ての団体と深く連携することは難しいかもしれません。しかし、互いの存在を認め、敬意を払い、できる範囲で情報交換をしたり、困った時に助け合ったりする緩やかな繋がりだけでも、活動を続ける上で大きな支えになります。違いを乗り越えて連携が実現した時の喜びは、また格別なものです。

違いの中にこそある学びと、活動の深み

動物保護活動における他の団体との「違い」は、連携を難しくする壁にもなり得ますが、同時に私たち自身の活動を見つめ直し、新たな視点を得るための貴重な機会でもあります。他の団体の活動を知ることは、私たちが向き合っている課題の多様さを知り、自分たちの活動がその大きなピースの一部であることを認識させてくれます。

比較から生まれる葛藤や悩みは、活動を続ける上での避けられない一部かもしれません。しかし、その感情と正直に向き合い、なぜそう感じるのかを掘り下げていくことで、自分自身の活動への思いや価値観をより深く理解することができます。それは、活動を続ける上での強い基盤となります。

理想とする「連携」の形は遠いかもしれませんが、違いを認め、学び合い、時には助け合う姿勢を持ち続けること。そして、他の団体との比較に心を乱されそうになった時には、自分たちの活動の軸に立ち返ること。そうすることで、私たちは「違い」の中に光を見出し、自身の活動をより豊かに、そして深みのあるものにしていけるのだと感じています。この「違い」との向き合い方もまた、「保護活動の本音」の一つとして、皆さんと共有できれば幸いです。