保護活動の本音

活動が深まるほど感じる『一人』の重さ。保護ボランティアが経験する孤独とその向き合い方

Tags: 保護活動, ボランティア, 孤独, 精神的負担, 体験談

保護活動で見え隠れする『一人』の重さ

保護活動には、確かに大きな喜びや感動があります。救われた命の輝き、新しい家族のもとへ送り出す瞬間の嬉しさ、そして何より、言葉を話せない動物たちが静かに伝えてくれる信頼や愛情。これらの経験は、活動を続ける何よりの原動力となります。

一方で、活動を深めていく中で、時にズシリと心にのしかかる『一人』の重さを感じる瞬間があることも、正直なところです。これは、活動の厳しさや責任、あるいは周囲との温度差などが複合的に絡み合って生まれる、独特の孤独感かもしれません。

特に、数年活動を続け、保護の現実や課題を深く知るほど、この感覚は増していくように感じています。活動に関心を持つ友人や家族との会話、他のボランティアとの意見交換、そして何よりも、命と向き合うその瞬間瞬間に。今回は、私自身が経験してきた保護活動における孤独のリアルと、それとどう向き合ってきたかについてお話ししたいと思います。

経験者が語る孤独のリアル

私が保護活動で「一人だな」と感じるのは、様々な場面です。

最も強く感じるのは、動物の体調が急変したり、看取りに関わったりする時です。夜中に一人で動物の傍に寄り添い、小さな命が消えようとする気配を感じる時、その責任と悲しみを一身に背負っているように感じます。他のボランティアと連携していても、その場にいるのは自分一人。誰かに代わってもらえるわけでもなく、その子にとっての最期を、自分一人で見守るしかありません。心細さと、どうすることもできない無力感に襲われ、深い孤独を感じます。

また、保護動物のケアや譲渡方針について、他のボランティアと意見が分かれた時も、孤独を感じやすい瞬間です。お互いに動物の幸せを願っているのは同じはずなのに、アプローチや考え方の違いから摩擦が生じることは少なくありません。自分の考えを十分に理解してもらえない、あるいは逆に、集団の方針に自分の思いを押し殺さなければならないと感じる時、組織の中にいながらも孤立しているような感覚になります。話し合いの場では「チーム」でも、心の奥底では「一人で耐えている」ように感じることがあります。

活動とは直接関係のない、身近な人間関係でも孤独を感じることがあります。活動の様子や大変さを話しても、「すごいね」「大変だね」という表層的な共感は得られても、活動に費やす時間や労力、精神的な負担の本当のところはなかなか理解してもらえないと感じることが多いです。悪気がないことは分かっていますが、どこか溝を感じてしまい、活動で抱える重い気持ちを共有できる場が、ごく限られていることに気づかされます。

このような経験が積み重なるにつれて、活動への情熱と、それに伴う精神的な疲弊や孤独感との間で、バランスを取る難しさを痛感するようになりました。

孤独と向き合い、心の支えを見つけるために

保護活動における孤独は、活動の性質上、完全にゼロにすることは難しいかもしれません。しかし、その存在を認め、それとどう向き合うか、そして心の支えをどこに見出すかが、活動を持続可能にする鍵だと感じています。

私自身が実践してきたこと、あるいは現在進行形で向き合っていることとして、いくつかあります。

一つは、「分かち合える場所と人」を持つことです。大人数の団体に所属していても、全ての人と深い部分で分かり合えるわけではありません。だからこそ、活動の中で信頼できる数人の仲間を見つけ、悩みや本音を話せる関係性を大切にすることです。たとえ解決策が見つからなくても、「自分だけではない」と感じられるだけで、心の負担は大きく軽減されます。また、活動とは全く関係ない場所で、自分の感情や経験を話せる相手を持つことも、心のバランスを保つ上で助けになります。

次に、「活動と自分自身を切り離す時間」を意識的に設けることです。保護活動は際限がありません。常に何かできることはあるように感じ、つい無理をしてしまいがちです。しかし、心身が疲弊してしまっては、活動そのものも続けられなくなってしまいます。意識的に活動から離れ、自分の好きなことやリラックスできる時間を持つことは、孤独を癒し、エネルギーを再チャージするために非常に重要です。罪悪感を覚えることもあるかもしれませんが、これは自己中心的ではなく、活動を続けるために必要な「投資」だと考えるようにしています。

そして、最も大切な心の支えは、やはり動物たち自身の存在です。言葉を交わすことはできませんが、保護動物たちが心を開いてくれたり、穏やかな表情を見せてくれたりする時、あるいは困難を乗り越えて元気になっていく姿を見る時、そこに言葉にならない「ありがとう」を感じます。この繋がりこそが、孤独を感じる瞬間の重さを和らげ、再び前を向く力を与えてくれるのです。彼らの存在そのものが、活動を続ける一番の理由であり、孤独な心に寄り添ってくれる光です。

孤独を抱えながらも、一歩ずつ

保護活動における孤独は、ある意味で活動に真摯に向き合っている証なのかもしれません。命の重さ、責任、そして理想と現実のギャップに深く触れるからこそ、一人で抱えきれない思いが生まれるのだと思います。

この孤独を完全に克服することは難しいかもしれませんが、その存在を認め、信頼できる誰かと分かち合い、そして何よりも動物たち自身との繋がりを心の支えにすることで、私たちは活動を続ける力を得られるのではないでしょうか。

活動の厳しさの中で感じる孤独は、時に私たちを立ち止まらせることもあります。しかし、その一方で、自分自身の内面と向き合い、本当に大切なものに気づかせてくれる機会でもあります。この活動で感じる「一人」の重さと共に、私たちは動物たちと共に生き、成長していくのだと感じています。