保護活動、お金を集めるということ。見えないプレッシャーと試行錯誤のリアル
保護活動と「お金」の切実な現実
動物保護活動に携わる中で、常に、そして切実に私たちに突きつけられる現実があります。それは「お金」の問題です。医療費、フード代、シェルターの運営費、光熱費、レスキュー費用…保護活動は、残念ながらきれいごとだけでは成り立ちません。どれだけ強い志があっても、資金がなければ目の前の命を救うことも、健康を維持することも難しいのです。
活動を始めた頃は、目の前の動物たちのケアや譲渡が主な関心事でした。しかし、活動が軌道に乗り、関わる命が増えるにつれて、資金繰りという問題が避けて通れない壁として立ちはだかるようになりました。そして、その壁を乗り越えるために必要となるのが、様々な形での「資金集め」です。
この資金集めという活動は、動物たちの命を繋ぐために不可欠である一方、私たち活動者にとって大きなプレッシャーや精神的な負担となることも少なくありません。今回は、保護活動における資金集めのリアルな側面、その中で私が感じてきた苦労や葛藤、そして試行錯誤についてお話ししたいと思います。
「お金ください」と言うことの重み
資金集めの方法には、街頭やイベントでの募金活動、チャリティグッズの販売、クラウドファンディング、企業や個人への寄付のお願いなど、様々な形があります。どの方法にも共通するのは、「支援をお願いする」ということです。
私にとって、この「支援をお願いする」という行為には、常に心理的な抵抗が伴いました。「お金をください」と直接的であれ間接的であれ伝えることは、どこか申し訳ないような、情けないような気持ちになることが正直あります。もちろん、それは自分たちのためではなく、救いたい命のためだと分かっています。支援してくださる方々の温かいお気持ちに触れるたびに、感謝の念に堪えません。しかし、「活動資金が足りていません」「この子の医療費が必要です」と発信するたびに、自分の無力さを突きつけられているような感覚になることがあるのです。
特に、特定の目標額を設定して行うクラウドファンディングなどは、成功すれば大きな力になりますが、目標に到達できなかった時のプレッシャーは計り知れません。「期待してくれた支援者の方々に申し訳ない」「この子に必要な医療を受けさせてあげられないかもしれない」といった不安が押し寄せ、夜眠れなくなることもありました。結果が数字として明確に出てしまう分、良くも悪くもダイレクトに活動者の心に影響を与えます。
感謝とプレッシャーの狭間で
ありがたいことに、私たちの活動にご賛同くださり、温かいご支援を届けてくださる方がたくさんいらっしゃいます。「頑張ってください」「応援しています」といった励ましの言葉と共にいただくご寄付は、活動を続ける上で何よりの力になります。その一つ一つに心から感謝しています。
しかし、その感謝の気持ちと同時に、「いただいた大切な資金を無駄にしてはいけない」「もっと結果を出さなければいけない」という新たなプレッシャーも生まれます。特に、資金の使い道について透明性を求める声や、時には活動方針に関する批判などを受けると、心が折れそうになることもあります。いただいた支援は、動物たちのために最大限に活用しなければという責任感があるからこそ、そうした声が重く響くのです。
本業や他の活動と並行して行う資金集めは、時間的にも精神的にも大きな負担です。イベントの企画・準備、リターンの手配、支援者への報告など、動物の直接的なケアとは異なる業務に追われる中で、「なぜこんなに大変なのに、十分な資金が集まらないのだろう」と自問自答し、無力感に苛まれることもあります。
試行錯誤の先に見えるもの
こうした資金集めを巡る苦労やプレッシャーと向き合う中で、私はいくつかの大切なことを学びました。
一つは、自分一人で抱え込まないことです。資金の悩みは、チームで共有し、どのように乗り越えていくか話し合うことが重要だと気づきました。仲間と共に知恵を出し合い、役割分担をすることで、精神的な負担も分散されます。
次に、感謝の気持ちを伝え続けることです。どんな小さなご支援であっても、それは私たちの活動、そして動物たちにとってかけがえのない力です。支援してくださる方々への感謝を丁寧に伝え、活動の状況や資金の使い道を誠実に報告することが、信頼関係を築き、継続的な支援に繋がると信じています。
そして、資金集めもまた、動物たちの命を守る活動の一部であると捉え直すことです。直接的なケアと同じくらい、あるいはそれ以上に、資金集めは活動の根幹を支える重要な役割を担っています。大変な道のりですが、この活動がなければ救えない命があるのだということを忘れずに、前向きに取り組む姿勢が大切だと感じるようになりました。
厳しさの中に確かな意義を見つけて
保護活動における資金集めは、感謝と共に常にプレッシャーがつきまとう、厳しさの伴う活動です。理想通りにいかないことも多く、心が折れそうになる瞬間も確かにあります。
しかし、この試行錯誤の過程で得られる経験や、支援者の方々との繋がり、そして何よりも、集まった資金によって救われ、新しい家族へと繋がっていく命の輝きこそが、この活動を続ける大きな原動力となっています。
資金集めの苦労は尽きませんが、それは動物たちのため、そして未来に命を繋ぐための尊い活動です。その意義を心に刻みながら、これからも一歩ずつ進んでいきたいと考えています。